2014,05,09

「イノベーション生む環境」  LINE社長 森川 亮氏




 最近、様々なカンファレンスで 「イノベーションはどうすれば起こるのか」 という意見交換がされています。 イノベーションは何か 「こうすればよい」 という方程式があるのではなく、どちらかというと結果論です。 ただ 「イノベーションが生まれやすい環境」 という面では議論が進められるかもしれません。




 アメリカ・ハーバード大学のクレイトン・クリステンセン教授は 「3つのイノベーションがある」 と定義しています。 1つ目は精巧で高価だったものをシンプルにして安くする 「エンパワリングイノベーション」。 ソニーのトランジスタラジオや、最近の例だとクラウドコンピューティングが挙げられる。 これは新たな仕事と利益を生み出します。




 2つ目は、既にある製品やサービスを磨き上げて価値を高める 「持続的イノベーション」 です。 これは古い製品が新しい製品に変わるだけなので仕事を創出せず、大きな利益も生みません。 




 そして3つ目は、既にある製品やサービスを、更に効率の良い手ごろな価格にする 「エフィシェンシー・イノベーション」 です。 ネット専業の保険会社が消費者に直接保険を販売することがこれにあたり、新しい仕事はさほど生みませんが、利益を生み出します。 




 これらのイノベーションは、企業や地域の文化によって生まれやすい環境が異なっています。 地域文化と云う麺では、私は日本、韓国、アメリカ・シリコンバレー、そして最近はイスラエルに注目しています。




 日本は以前は1つ目のイノバーションが得意でしたが、そこで成功した大企業になった結果、より効率的な2つ目のイノバーションにシフトしました。 これが原因で、日本企業はニーズが技術革新で変化する時代に新しいイノベーションを生み出せなくなったように思います。




 韓国は1997年のアジア通貨危機後の抜本改革でIT(情報技術)分野へ傾倒したことでイノバーションを生み出しました。 単に規制改革や資金面だけでなく、優秀な人材を育てる教育システムや大企業や財閥からの人材移転、大学卒業後の兵役免除など総合的な施術が奏功した。




 シリコンバレーは、世界中から腕に覚えのあるエンジニアや企業化が集まる人材集積地としての力が大きいと思います。 もとろんスタンフォード大学や大手IT企業からの人材供給や投資家によるエコシステムも重要です。 ただ、最も大きな要素は外部人材、そしてそれを受け入れるおおらかな文化だと思います。




 最近注目しているにはイスラエルです。 同国は国内総生産(GDP)に占める研究開発比率や、国民1人あたりの企業率・特許数が世界最大です。 アメリカ・IT大手がこぞって開発拠点を作って人材を囲い込んでいます。




 文化的には軍事産業を中心とした技術力、移動を大前提として国民性、遠慮なく意見を言い合えるコミュニケーション力がイノベーションを生んでいると聞きます。 これは今年実際に訪問し、意見交換したいと考えています。 




 韓国、アメリカ、イスラエルに共通するのは、古い規制や構造を壊し、優秀な人材がベンチャーに集まり、異文化を受け入れ新旧や上下の関係なく議論できる、という文化です。




 日本はどうでしょうか。 もちろん技術力はありますが、優秀な人材は大企業にいってしまう。 そして大企業中心に様々な構造的な規制がある、また上下で自由に物が言いにくいムードもあります。 ここを変えないとイノベーションを起こすのは難しいかもしれません。




 「それを変えるのは企業家だ」 という指摘も頂くので、変えるムーブメントを作っていきたいと思います。 (日経産業新聞)



 

   




         

    

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