14年ぶりにトップ交代から2ヶ月。 アメリカ・マイクロソフト(MS)が目指す方向性が徐々に見えてきた。 スマートフォン(スマホ)やタブレット(多機能携帯端末)の市場で、アメリカ・グーグルやアメリカ・アップルを追う立場にあるサティア・ナデラ経営最高責任者(CEO)がまず示したのは、2つの 『現実解』 だった。

 

 

「地に足をつけること」 「自分が置かれている状況について、バカがつくくらい正直であるこ」。 2月下旬、アメリカ紙ニューヨークタイムズのインタビューで前任のスティーブ・パルマー氏から学んだことな何かと問われ、ナデラ氏はこう答えた。

 

 

 

アップルの 「iPad」 で業務ソフト 「オフィス」 を利用できるようにする。 スマホと小型タブレットのメーカーに基本ソフト(OS)を無償で提供する。 過去10日間に相次ぎ打ち出した新戦略は、いずれもこの教えを忠実に守ったと考えるとわかりやすい。

 

 

 

スマホとタブレットの市場におけるウィンドウズのシェアはどちらも3%台(2013年、アメリカIDC調べ)。 市場をほぼ独占したパソコン(PC)時代の 「王者」 の風格はない。

 

 

 

一方、オフィスは世界で今でも10億人以上が利用するドル箱ソフトだ。 切り売りのビジネスモデルから、利用料を毎月微収するクラウド型サービスへの移行を進めているが成長の制約要因となっていた。

 

 

 

モルガン・スタンレーの試算では、iPadでもオフィスが使えるようになることによるMSの増収効果は年間13億ドル(約1300億円)。 収益機会の大きさを考えれば、グーグルのOS 「アンドロイド」 搭載端末を含め、「あらゆる端末でオフィスを利用できるようにする」 のは極めて現実的な判断と言える。

 

 

 

ウィンドウズの一部無償かも 「象微的だが、失うものはほとんどない」 決断だった。 対象を画面サイズが9インチ以下の端末に限定することで、今も収益の大きな柱であるPC向けのウィンドウズ事業を守りつつ、グーグルが無償のアンドロイドで築いた牙城に切り込める。

 

 

 

しかし、一部の端末メーカーにとっては、無償化されるウィンドウズはアンドロイドよりも〝安く″なる。 アンドロイドにはMSの特許が使われておアンドロイド端末メーカーの中には、MSの特許料を払っているところがあるからだ。

 

 

 

「守る側ではなく、挑戦者の発想でイノベーションを起こす」。 4月2日から3日間、サンフランシスコで開いた開発者会議で、ナデラ氏は集まった5000人のソフト開発者にこう約束した。

 

 

 

会議ではMSのクラウドを使ってアンドロイドやアップルの 「iOS」 向けのアプリを作りやすくする新ツールを発表するなど、ウィンドウズ以外のOS向けのソフト開発を積極的に支援する姿勢を強調。 参加者からは 「MSの開発会議でアップルの 『iphone』 がデモに使われるなんて以前は考えられなかった」 といった声が聞かれた。

 

 

 

変化を感じたのは開発者だけではなかったようだ。 会議に参加したMS社員の一人は 「今の会社は 『ワクワク感』 がある」 と話す。 ナデラ氏がトップに就任した4月2日から株価は1割近く上昇。 投資家も同じ期待を抱いていることを示している。

 

 

 

もとろん、約束と実行は別問題。 「ハネムーン」 が終われば、視線も自ずから厳しくなっていく。 月内のも買収手続きを完了するノキアの携帯端末事業の立て直しなど、課題は山積している。

 

 

 

新戦略で示した 「情」 より 「理」 を優先するリーダーシップをどこまで貫けるか。 これまでのところ、目立った動きが報じられていないビル・ゲイル、パルマー両氏の動向が気になるところだ。(日経産業新聞)

 

 

 

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