朝井氏      今回で5回目の 「仕事って何」 今回は、作家の朝井リョウ氏をご紹介します。       小説家の朝井リョウ氏は、就職活動とソーシャルメディアを題材にした 「何者」 で23歳のときの直木賞を受賞した。 早稲田大学在学中にデビューしていたが、会社員との兼業の道を選んだ。 小説の題材には児童養護施設を取り上げるなど硬派の一面を持ちつつ、20代ならではのみずみずしい感性にも定評がある。 会社員として普通の生活を貫きながら、2つの視点を創作に生かす。        --「何者」では、ツイッターを駆使する就活生が現実世界では表向きは仲良くしながら、ネット上では神経戦を繰り広げます。      「就活をテーマに、人間同士のコミュニケーションが変容する様を描きたい。 僕自身は無料通信アプリ 「LINE」 を2日間試してみて、これははまるなと直感した。 逆に、これ以上やったら作家を廃業しなければならなくなると思って完全にやめたが」      「人に嫌われたくないという意識が常に自分の中にある。 小学校のときからネットがあり、高校ではクラス別掲示板があった。 ミスがあったら直ぐにたたかれて、住所、名前や家族構成が暴かれて追い込まれる--というのをずっと見てきた。 だから、ものごとを先回りして予測し、防御する力に物凄くたけている。 僕らネット世代はみんなそういう面があるのではないか」        --プロの作家になるという夢をかなえながら、会社員生活も営んでいます。 二足のわらじを選んだのは何故ですか。      「一般企業に勤め、4月に社会人3年目を迎えた。 普通に周りの友達と一緒に就職活動を始め、流れに乗ったというのが実態に近い。 周りの学生も 『大学を卒業したら就職する』 と、わざわざ決意して就職活動をしたわけではない」       「就活ってゴールも見えないし、何が原因で落ちるかがわからない。 就活生は面接官を神のように捉えがちだ。 でも、本当にそうだろうか。 笑い話として効いて欲しいが、面接の前にトイレに行って面接官が自分と同じように排泄する姿を確認するようにしていた。 面接官は本番に100点の状態で出てくるが、上司の盗んでサボることもあるし、同じ動物なんだと思って力を抜いた方がいい。 会社の人間関係も同じでは」        --働き事は、学生時代と同違いますか。      「学生時代から地続きだと思う。 もっとも、社会人として丸2年に過ぎないので、えらそうな口はきけないが。 就学生のときは 『特殊な能力がない仕事ってできないのでは』 と思っていたが、全然そんなことはない。 新しいスポーツを覚えるような感覚で、仕事もちょっとずつ覚えていくのだと感じている」        --とはいえ、給与という対価を得ながら仕事をすることの重みはありますよね。      「実は僕も結構、兼業生活に疲弊してたことがある。 『会社を辞めれば身体は楽になるが、楽になるのは身体だけかもしれない。 どの選択がいいのか分からない』 などと考えていたとき、ある上司がこう言葉をかけてくれた。 『いいか悪いかというのはこの世になくて、居心地がいいか悪いかで決めればいい。 居心地が悪くなったらやめればいい』。 これを聞いてとてもら気になった」      「新入社員で 『あまりにも仕事がつらいが、3年勤めないと職歴にならない』 などと、袋小路には待っている人もいるかもしれない。 いいか悪いかの尺度ではなく、居心地がいいか悪いかに着眼点を移すのも手だと思う」        --新刊の 「スペード3」 では、浅井さんとして始めて社会人を主人公に取り上げました。 女優とその追っかけの女性たちが登場します。      「社会人になって 『大人なのに小学校の学級委員のようなことをしている人がいるな』 『おかしいな、何でだろう』 と気づいたのが執筆のきっかけだ。 昨今、今年と文学賞を立て続けに頂いて、やっと自分が身をおいていない世界の話を書いてもいいんだ、と思えるようになった。 次回はアイドル小説を書く予定だ。 我欲を表に出している人、それがアイドル。 そんな人が好きで興味がある」        小説家 朝井リョウ氏のこだわり    『週末はファミレスでひたすら執筆』     朝井氏は 「会社員としても、作家としても、それぞれ100%の力を注いでいる」 と話す。 文学賞を取ったことで 「先生」 と呼ばれることを忌み嫌い、あえて普通の生活を貫く。 作家として(書くとか下調べ)毎日何かはするといい、週末はファミレスひたすら執筆する。 「1日何もしないと、その日からないもしない非が続きそうな気がして」。 自分を律する素顔が垣間見える。                            ツイートこの記事をつぶやく