2013,02,16

「災害イマジネーション」力を高め適切な対策を進めることが大事!

     
 toyokeizai.netに東京大学目黒教授のインタビュー記事が掲載されたいました。      日本は現在、地震活動度の高い時期を迎え、マグニチュード(M)8クラスの巨大地震をはじめ、大きな地震が多発するおそれがある。 防災対策の重要性が高まる中、行政や市民には、どのような取り組み、考え方が求められているのだろうか。 都市震災軽減工学の第一人者であり、東京大学 生産技術研究所 都市基盤安全工学国際センター長の目黒公郎教授に聞いた。                     目黒教授        ―東日本大震災を機に、国や地方自治体も防災対策に積極的に取り組んでいます。 その進ちょくをどのようにご覧になっていますか。 また、不備があるとすれば、どのようなことから取り組むべきでしょうか。        目黒 残念ながら、現状の取り組みでは、事後対応に力点を置くものが多く、防災上の効果が高いとは言えない。        正しい防災対策は、リスクマネジメント(リスク管理)とクライシスマネジメント(危機管理)の観点から取り組むことで達成される。 具体的な対策は、事前の 「被害抑止力、被害軽減力、災害予知と早期警報」 と事後の 「被害評価、緊急災害対応、復旧、復興」 に分類される。 地震に限らず、台風、火山、洪水など、各地域が直面するハザードに対して、これらの七つの対策をバランスよく講じることで、被害が最小化できる。        防災対策の担い手には 「自助」、「共助」、「公助」 があり、七つの対策には、それぞれハードとソフト対策がある。 縦軸を担い手、横軸を対策としたマトリクス(M)を用意し、ハザード別にできる限りの対策を書き出す。 これが防災対策の 「あるべき姿M」 である。 次に、これまでに実施してきた対策を書き込んだ 「ありのままの姿M」 を作成し、両者の差を求めると、「実施すべき対策M」 が得られる。 これらの作業を防災担当と現業部門が協力して進め、個々の対策に「担当部局、時間、費用、達成時の効果」を付記する。 これによって、防災対策全体の中から、限られた時間と予算、人的資源の中で、最大の効果を発揮する対策の組み合わせがわかる。 「実施すべき対策M」 の実施と定期的な見直しによって、全体俯瞰した上で適切な対策の持続的な立案と推進が可能となる。        特筆すべき二つの重要ポイントは、「あるべき姿M」 の内容から、行政が 「自助」 や 「共助」 で対応すべき対策の多さに気づき、防災計画立案の早い段階からの市民参加スキームができること。 さらに、「公助」 を市町村、都道府県、国に分けて検討することで、従来は難しかった、市町村単独での対応が不可能な規模の災害が考慮の対象になり、都道府県も市町村の業務代行を意識できることである。        平時からの備えの点では、中国が2008年の四川地震の後に用いた 「対口(たいこう)支援」 が参考になる。 被災地を複数のブロックに分け、各地区を支援する担当自治体を決め、長期支援する仕組みだ。 これが支援自治体に責任を生み、被災地の復旧・復興の質と速度を担保するとともに、支援自治体が災害対応を学ぶ貴重な機会になる。 これをわが国で実現する平時からの自治体間の「日本式対口支援」制度が求められる。        ―地震防災に関しては、耐震補強が効果的とされます。 しかし、住宅の耐震化はあまり進展していません。その要因はどこにありますか。        目黒 最大の理由は、災害発生時の条件を踏まえ、時間経過にともなって、自分の周囲で起こる状況を具体的に想像する能力 「災害イマジネーション」 が低いこと。 人間は自分が想像できない状況に対する適切な心がけや対応は絶対にできない。        津波防災は重要だが、いくら津波避難施設をつくり、逃げる訓練をしても、地震の揺れで家が倒れたのでは意味がない。 倒壊建物の犠牲者にはレスキュー活動では救えない人が多いこと、公的消防力のみでは対応不可能な震後火災では市民の自主消火が重要だが、これが建物被害が多いほど困難になり延焼危険性が高まることからも、わが国の地震防災の最重要課題は既存不適格建物の耐震補強だ。        「災害イマジネーション」 に加え、技術や制度の問題もある。 技術面では、高性能でも高価なものは普及しない。 ただし、安すぎては、まともな業者は参入しない。 さらに対策の効果が簡単かつ高精度に評価できる診断法が求められる。        制度としては、建物の持ち主に耐震補強に対して強いインセンティブを与える機能が重要だ。 つまり 「努力した人が報われる」 制度だ。 何もせず弱い家に住んでいて、それが地震で壊れると公費が支給される制度は将来の被害抑止効果がまったくない上に、事前の耐震補強を阻害する効果を持つ。        ―行政が事前準備金を用意し、耐震化を推進する耐震補強支援制度もありますが、これも、課題があると言えそうです。        目黒 耐震補強が必要な建物は、都道府県あたり数十万戸もある。 必要な予算額は数千億円となる。 「市民の認知度が低く、制度の利用が進んでいない」 と言う自治体もあるが、実際は、対象の市民がすべて手を挙げれば、制度自体が破たんする。        財源が限られる中、私が耐震化を推進するために提唱している制度が 「目黒の3点セット」 だ。 行政によるインセンティブ制度(公助)、新共済制度(共助)、新地震保険制度(自助)であるが、いずれも事前に自腹で努力し、新耐震基準を満足した住家を対象としている。 これらが実現すると、対象住家に住む世帯には、数万円の出費のみで、将来の地震時に揺れや火事で被災した際に、住家の再建に十分な二~三千万円の支援金を供与できる環境が整う。 耐震化の自助努力が報われるだけでなく、将来の被害と行政の出費を激減する。        公費(税金)を使う防災対策は、納税者に説明責任を果たす必要がある。 近視眼的でローカルな施策ではなく、わが国全体の長期的な防災効果が高い対策に取り組んでいくことが大切だ。(toyokeizai.net)                     
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