2011,11,29

「悲しみに寄り添う小説」  作家  伊集院静氏

       日経夕刊 「人間発見」 のコーナーに作家伊集院静氏が紹介されていて最終回をなかなかご紹介できませんでしたが遅れましたがご紹介します。          1992年、女優の篠ひろ子さんと結婚、住まいは仙台市に移す。          雅子さんの七回忌を済ませたことと直木賞受賞が一つの区切りだと思い、再婚を決意しました。 しばらくは彼女が住み都内のマンションに一緒に暮らした後、彼女の故郷である仙台に引っ越しました。       結婚する時、ひろ子さんの両親に雅子さんのことは書かないと約束しました。 今年出版した 『大人の流儀』 で当時のことを書いたのは、ひろ子さんと雅子さんの両親がみんな亡くなられたからです。 現在、1カ月のうち20日間が仙台、10日が東京という生活で、小説は仙台で執筆しています。      直木賞をもらった時は、父が喜んでくれると思ったのですが、まだそんなことをやっているのかと言われました。 父にとって男の仕事とは、従業員を沢山雇って事業をすることなんです。 その後もずっとそんな調子で、少し認めてくれたのは2002年に 『ごろごろ』 で吉川英治文学賞をもらってからですかね。              しばらくヒット作品が無い時代が続いたが、今年出版の 『いねむり先生』 は10万部のベストセラーになった。          妻を失った男と小説家の交流を描いた作品です。 この小説は色川武大さん。 本名で純文学を書きながら阿佐田哲也の筆名で 『麻雀放浪記』 などの博徒小説を書いた人です。 知り合ったのは先生が亡くなる2年前で、一緒に全国の競輪場を回る 「旅打ち」 に出かけました。 以前から書きたかったのですが、60歳を過ぎ、先生が亡くなった年を超えた。 それで今、自分が見た先生の最後の2年間を書いておこうと思ったのです。       作品では先生への無条件の敬愛を表現しました。 色川さん傲慢さが全くない人でした。 時と場所を選ばず突然睡魔がやってくるナルコレプシーという病気を抱えていましたが、一生にいると心が安らぐんです。 当時の私の雅子さんを亡くした直後で神経を病んでいたから随分救われました。      反面、小説家としてはすごい人でした。 それまで小説というのはカルチャーセンターで勉強すれば書けるものだと思っていました。 でも色川さんを見て、小説を書くべき人間が書くんだと初めて分かりました。 それで自分はダメだと思った。 でも編集者に言われました。 何も色川さんほどの人にならなくてもいい。 席はいくつもありますからって。 書かせたいもんだからうまいことを言うんです。            還暦を過ぎて精神的に執筆を始めた。 今年から直木賞の選考委員も務める。          昔、父が韓国から呼んだ占い師に見てもらったら、私は60歳まで生きたら必ず成功すると出たんです。 それでずっと60歳になったら書くと宣言して、出版社から前借していたんです。 それもあって還暦が近づいたころから意識して書くようになりました。 確かに今年出版された本は多い。 でも、「大人の流儀」 や紙と電子書籍で出した 「なぎさホテル」 などエッセーがほとんど。 小説は 「いなむり先生」 だけです。 ブームだなんて言われていますが、すぐ終わりますよ。      いろいろなジャンルに挑戦しようと思って、推理小説を始めて書きました。 雑誌 「オール読物」 で 「星月夜」 という作品を連載した。 来年は新作も発表します。 推理小説は面白くしよう、面白くしようと思えば、文学から離れて行くようなところがありますが、文学性のあるものにしようと取り組んでいます。 その後、吉田松陰を主人公にした時代小説を書きます。 自分なりに明治維新とはなんだたのかを考えたみたい。 現在、河北新報で 「青葉と天使」 という仙台を舞台にした新聞小説を連載していますが、この作品では震災のことも取り上げます。      直木賞の選考委員は自分を認めてくれた賞でもあり、喜んで引き受けました。 日本文学のレベル引き上げるとともに、書店で本をたくさん買ってもらえるような作家を育てたいですね。 私は新人賞の選考委員もいくつか務めています。 新しい人が目指す新しい世界は常に新鮮で刺激を受けます。      私は人間としては、戦火の中、義弟を救いに行った親父を一生超えることはできないと思っています。 でも小説家としてはまだこれからです。 つらい屈折の時間が長かったことが今後の人生の支えになってくれるでしょう。        以上、日経夕刊 「人間発見」 のコーナーに作家 伊集院静氏が紹介されていました。 今回が最終回となっります。        合わせて1回目を読む。 2回目を読む。 3回目を読む。 4回目を読む。             ツイートこの記事をつぶやく