2011,08,06

アンチエイジングの処方箋 順天堂大学大学院教授  白澤卓二氏。

       昨日に続き、日経新聞夕刊の人間発見のコーナーにアンチエイジングの処方箋 順天堂大学大学院教授 白澤卓二氏のインタビュー記事を紹介します。          2004年にNHKの「老化に挑む」という番組でスキーヤーの三浦敬三さん(当時100歳)や聖路加病院の日野原重明先生(当時92歳)に出会った。          冒険家でスキーヤーの三浦雄一郎さん(78歳)の父・敬三さんは、99歳でモンブランの氷河を滑り、年間120日も滑った。 この敬三さんが100歳になった時 「1日として同じ雪を滑ったことがない」 と言ったんです。 場所や滑りかた、時間によっても雪質は違うわけで、その雪にいかにうまく滑るかが、敬三さんのテーマでした。 自然は取ってとてつもない深い存在で、一生チャレンジする生きがいでした。 このことがアンチエイジング(抗加齢)となるのだということを実証しようと思い立ったのが、研究を始める一つのきっかけとなったのです。        現場のお医者さんは治療医学のプロトコル(治療計画)しかやらないものだから、予防医学で何を実践したらいいか、なかなかわからない状況でした。 ところが雄一郎さん(歳、75歳で登頂し、さらに80歳でもチョモランマ(エベレスト)に登ろうと目覚ましい活躍をされています。 予防医学的な実践によってここまで達成できると報道されるなど、予防医学を広めていくにはすごくいい象徴となるので、お手伝いをしてもらっているわけです。        敬三さんにしても日野原先生にしても、こうしたお手本があると分かりやすいんです。 理論だけではない、このおふたりがやってきた生活スタイルが基本型になっている。 一人はスキーヤー、1人はお医者さん。 この二人を融合したような方法論、生活術というのを居つくかの本にまとめています。 あとはサーチュイン(長寿遺伝子)のような分子生物学的な動きもあって、そういうエビデンス(証拠)と、おふたりの生活術の中にあるものを新しい学問領域にドッキングさせるのが私の課題だと思っています。        アカデミズムだけを追う研究者は国民への説明能力が無かった。 専門家が勝手に税金を使って実験をやっているのじゃないかとか、経済が悪くなると研究者に揺さぶりがかかってくる。 敬三さんが、こういうことをやっていて、それはこの遺伝子をスイッチオンにしていということになれば納得するのではないでしょうか。 国民にわかるような形でテーマを還元する必要があり、そういうことをやっている人はほとんどいない。 僕はその仕事を買って出ていると思っています。          順天堂大学の大学院教授でると同時に、株式会社アンチエイジングサイエンスの取締役でもある。 企業などからの資金援助を受け、寄付講座の加齢制御医学講座を主宰する。          アメリカの教授はもっとエネルギッシュです。 日本には僕のようなスタイルは少ないが、アメリカでは企業を持っていたり、特許を取って起業するのは珍しくありません。 アカデミックな基盤をつくるとともにビジネスの基盤もオーバーラップしている。 そういう手法です。 具体的には企業の顧問などをやることによってどういうメーケティングをしたらいいのか、新しい商品の開発のお手伝いやアドバイスもしている。 食品産業がメーンで、後はサプリメント会社、漢方など予防医学につながる製薬会社などです。        東京都老人総合研究所にいた時に 『バカの壁』 を書かれた養老孟司先生は脳の解剖が専門だが、昆虫が大好きで、東大では学生の相手なんかしないで、自分の世界に没頭していた人なんです。 世間では東大医学部というものは誰も知らないと思う。 でも養老先生は一般の人にメッセージを出せる変わった教授だったんです。        僕が2007年に順天堂大学に寄付講座を開設する時、“養老スタイル化” を目指したんです。 メディアを利用して医学の内容を国民に分かりやすく解説する人が医学部に必要と思ったのです。 このオフィスを運営するスタイルは養老先生に近い。 集めた資金を持って来ているので、大学には逆にお金を入れる形になっています。 大学のブランドを汚さないようにスマートな内容を出すように心がけている。 懐の広い大学でありがたいです。            世界のアンチエイジング(抗加齢)医学の動向はどうなっているのだろうか。          世界に目を向けるといろんな考え方がある。 アメリカでは、もっぱらホルモン補充治療あたりから入ってきたので、女性ホルモンを投与する。 日本でもいますがアメリカと比べると50対1です。        日本ではホルモン剤まで使って若々しく自分を保とうと考えない。 サーチュイン(長寿遺伝子)をオンにするサプリメントが出るとアメリカ人は殺到して激しく飲んでいる。 長寿は誰でも望むところだが、日本人はそこまでどぎつい考えはないようです。         ヨーロッパはアロマテラピーとか美容、お肌の手入れ、コスメ(化粧)などという所に凄く力入る。 見た目が大事。 若々しいことには非常に興味がある。        では日本の興味は何処に。 それは 『内側の活力』 (内側のアンチエイジング) に行く。 ヨーロッパは外側の見た目に。 アメリカは無理やりの若返り術に力は入る。 温度差がある。         日本のドクターは、内側から若返ることに興味を持っている。 2003年、まだ数百人の頃からお世話しているが、いまや日本抗加齢医学会会員は7000人となりました。 その70%がお医者さん。 内科だけでなく、眼科、歯科、外科と横断的に全科に及んで、糖尿、循環器、消化器の学会と肩を並べるほどです。          6月の京都の学会で白澤卓二教授が発表し、反響を呼んだのが「テロメア」の調査結果だった。          平たく言うと、テロメアというのは意味が 『端』 という通り、細胞の中にある染色体の末端にあります。 年を取るとそのテロメアが短くなる。 だから 『寿命のバイオマーカー』 と呼ばれている採血してテロメアが短かったら長生きできないね、という話になる。 若い人の血を取るとテロメアは長い。 『寿命の回数券』 ともいわれる。 寿命が長いということは回数券が沢山残っているということ。 回数券が無くなると細胞は分裂出来なくなって老化するということは分かっている。        長野県上高井郡の高山村でテロメアの調査をしました。 この村はワイン用のブドウやリンゴと温泉が主要な産業。 観光と農業で60%の人が暮らしている。 高山村から10人、同じ年齢、性別の東京の人と比べたらどうなったか。 採血して調べたら高山村の人がかなり長いことが分かった。 考えられることは高山村の人がポリフェノールが豊富な果物や温泉など、生活スタイルがアンチエイジングなどに囲まれている。 それに対して、東京は大気汚染、朝晩の通勤ラッシュ、 オフィスのストレス、昼は添加物入りの弁当、夜はお酒でテロメアを短くする生活と想像できる。        研究途上のこのテロメアを早く一般の人にも検査できるようにしたいと思っています。 しかし、どこまで正確に 「あなたの寿命は」 と言っていいのか、まだ研究で固めなければいけないことがたくさん残っている。 高山村の人がもケースから見ていると食事や生活習慣、睡眠、海抜500~1500メートルという高地でることも関係しているのか。 社会的な影響が大きいので、データをさらに蓄積する必要がある。        これが使えるなれば非常に有用な予防医学の新しい道具になる。 インパクトがあるだけに、食事や運動の改善の動機ずけになる。 テロメアが短いといけないんだといえる。 この検査を国民レベルでできるようなものにして、予防医学を浸透させいきたい。        もう一つ目指したいのは日本文化の国際化で、特に日本の食文化を海外に輸出しようとするこころみです。 その時は 「長寿食」 というタグ付きで輸出する。 コンセプトは健康で長生きするために食べようと、世界一の長寿国日本から発信することです。 「この村はテロメアが長い」。 こういう証明付きで、村の人はこういうものを食べていると、村単位の国際ブランドをつくるのです。          ぼく自身、ある意味、実験オタクでスキーも何も知らなかったが、三浦雄一郎さんに 「ワイルドの中に出ていけ」 と言われ、雪山に行ったり沢登りをしたり50歳になって自然との融合を図れました。 実験室の中だけでは出てこない発想がある。 そうでなければここまで発展してこなかったと思う。        と記事がまとめられていました。               ツイートこの記事をつぶやく